TOP > 歴史・地理 > 伝承「石工の嫌った口笛」 ≪ 伝承「石工の嫌った口笛」 ≫
 昔、寒い寒い冬のある朝のことでした。石工親子は、いつものように遠くから離れた川端の石垣造りに出掛けた時のことだそうです。若者は仕事場に着くと、まず始めに道具を運び出しました。その日はあまりにも寒かったので、いつもと違って金物や石に手をふれるとジカジカに凍りつくといった始末でした。若者は「寒い、寒い。」とつぶやきながら寒さをふっとばそうと唄まじりの口笛を吹きながら仕事にかかりました。
 クワを大きく振り上げた時です。どこからともなくクワ先の地面の下から声がします。ふとよく見ると、それは見たこともあい気味の悪い一つ目小僧が現れ「俺を呼んだのは、お前か」と言いました。それを聞きつけた父親は、若い石工のところにかけよっていきました。不気味な一つ目小僧は親分に向かって「俺の好物は火だ、火が大好物だ」と言います。一つ目小僧が寒がっていると思った父親の石工は、おそるおそるあたりの枯れ枝を集め、火を焚き始めました。ところが、枯れ枝も凍りついてなかなか火がつきません。やっとのことで勢いよく燃え始めたころ、今度は一つ目小僧が何をするか眺めていると燃え盛る炎を指さし「俺は、火が好物だから食べるぞ。」と言って、炎をペロペロと食べてしまいました。炎を食べつくしそうになると、次は自分たちが食べられてしまうのではないかと思い、石工の親子は一目散に家に帰って行きました。石工の親子は、あまりの恐ろしさに七日間も家の雨戸を締め、いろりの火も焚かないで真っ暗な部屋の真ん中でガタガタしていたということでした。
 この土地の石工の言い伝えによると、口笛は魔物を呼び出すといって、大変嫌ったということです。

かつては専門の職人もいた石積み
引用:「ふる里わら科八社〜第一集」大川寿大学.昭和55年